スター・ウォーズ エピソード6考察|ルークはなぜ最後に剣を捨てたのか

最後の勝負で、もっと強い技を出すのではなく、武器を手放す。『ジェダイの帰還』のルークは、冒険の終わりに少し変わった場所へたどり着きます。敵を倒す力を身につけたうえで、その力をどこで止めるかを問われるのです。

もちろん、難しい主題だけを味わう映画ではありません。ジャバの宮殿の怪物たち、森をすり抜けるスピーダー・バイク、宇宙で同時に進む戦い。何度観ても、まず楽しい場面が次々にやってくる。

その楽しさを支えたのは、森を歩いて撮るという意外な撮影や、操り人形の動きの試行錯誤でした。今回は物語の決着と手作りの映像の両方から、旧三部作の締めくくりを見直します。

前半は核心的な結末を伏せて紹介します。「ネタバレ考察」以降は本作の結末に触れます。シリーズ未見の方は、各作品の考察部分と予告映像の視聴順にご注意ください。

あらすじ

ハン・ソロを救うため、ルークと仲間たちはタトゥイーンの犯罪王ジャバ・ザ・ハットのもとへ向かいます。かつての頼りなさを脱ぎ捨てたルークは、ジェダイとしての力を携えていました。

そのころ、帝国は新たなデス・スターを建造していました。反乱同盟軍は要塞を守るシールドを解除するため、森に覆われた衛星エンドアで作戦を進めます。ルークは、父ダース・ベイダーともう一度向き合おうとしていました。

基本情報

作品名スター・ウォーズ/ジェダイの帰還(エピソード6)
原題Star Wars: Episode VI — Return of the Jedi
製作年1983年
製作国アメリカ
監督リチャード・マーカンド
主な出演者マーク・ハミル(ルーク)、ハリソン・フォード(ハン・ソロ)、キャリー・フィッシャー(レイア)、ビリー・ディー・ウィリアムズ(ランド)、イアン・マクダーミド(皇帝)
音楽ジョン・ウィリアムズ
ジャンルSF/アクション/アドベンチャー

『ジェダイの帰還』の見どころ3選

1. ランコアを失った飼育係の涙が、敵にも暮らしがあると気づかせる

スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還 日本語公式予告編。ディズニーの日本向け公式チャンネルによる映像。予告編には本編の場面が含まれます。YouTubeで見る

ジャバの宮殿には、姿も動きも違う生き物がひしめいています。けれど、一体ずつ図鑑のように紹介されるわけではありません。演奏する者、取り引きする者、命令を受ける者がいて、それぞれに役目があり、人間の酒場や職場にも似た空気があります。異様な姿をした生き物たちなのに、そこで生活していることが伝わってきます。

ランコアの場面も、ただ大きな怪物に襲われて逃げるだけでは終わりません。巨大な相手の動きに重さがあり、画面の暗がりに収まることで、すぐ隣の空間にいるように感じられます。仕掛けが見えそうな危うさまで含めて、手触りのある怖さです。

そのあとに見える飼育係の反応も忘れがたい。倒されるためだけに生まれた怪物ではなく、誰かには世話をする相手だった。数秒の表情で、主人公にとっての敵にも別の関係があったことを見せてくれます。

管理人
怖い怪物が倒れたら、普通はこちらもほっとしますよね。そこへ悲しんでいる人の顔が入るだけで、気持ちが少し止まる。映画は先へ進むのに、「あの人には大事だったんだな」が残る。その小さな引っ掛かりが、この銀河を広くしている気がします。

2. 森のバイクチェイスは、木にぶつかりそうで肩に力が入る

エンドアの風景を思わせる北カリフォルニアのレッドウッド林。撮影地域の植生の参考写真で、本編の場面や特定の撮影地点ではありません。
エンドアの風景を思わせる北カリフォルニアのレッドウッド林。撮影地域の植生の参考写真で、本編の場面や特定の撮影地点ではありません。
写真:Owen Lloyd / Wikimedia Commons / Public domain

スピーダー・バイクの追跡では、広い空を気持ちよく飛ぶのとは違う怖さがあります。幹が次々に近づき、逃げ道が細くなり、体を少し傾けるだけで結果が変わりそうに見える。進む方向を見ているこちらまで、無駄に肩へ力が入ってしまいます。

VFXのデニス・ミューレンが公式インタビューで語った方法は意外に素朴です。ステディカムの発明者ギャレット・ブラウンが、カメラを安定させて森を歩き、約1秒に1コマの低速度で背景を撮影しました。その映像を通常の速度で再生すると、森の中を猛スピードで進んでいるように見えるのです。

完成画面は、もちろんその散歩映像だけではありません。別に撮影した人物やバイクなどを組み合わせ、カメラの揺れ方も合わせています。歩いて撮った森の映像に、人物とバイクを重ねて高速の追跡に変える。身近な撮り方が、あの迫力につながっているのが面白いところです。

管理人
仕組みを聞くと「歩いただけなんだ」と笑いたくなるのに、映画ではまた体がこわばる。その落差が楽しいです。派手な場面の入口に、誰かがカメラを持って森へ入るという地道な仕事がある。知るほど、あの短い追跡をもう一度観たくなります。

3. 仲間が戦うなか、ルークは別の勝ち方を探す

エンドアの地上、宇宙、皇帝のいる場所。それぞれ別の戦いが同時に進みます。誰かが勝てば全部終わるのではなく、一つの成功が別の場所の可能性を作る。自分では見えないところで仲間が働いていることが、クライマックスの力になります。

イウォークの活躍には、かわいらしさと戦力の差の受け止め方で好みが分かれるところもあります。ただ、土地のことを知る者が、自分たちの道具や足場を使って加わる、という見方はできます。帝国の大きな装備と同じ土俵で戦わない面白さです。

ルークの決断も、その総力戦の一部です。ただし、彼だけは別の勝ち方を探さなければならない。技や装備の増強とは違う成長を最後に置くことで、冒険の締めくくりに、長く考えたくなる余白が残ります。

管理人
仲間たちが遠くで頑張っているのに、本人には見えない。その状態で、自分がどうするかを決めるんですよね。応援が聞こえない場所でも、自分が信じることをやめない。大人になったルークの強さは、そこにあるように思います。

知ると見直したくなる豆知識・撮影秘話

ランコアは、着ぐるみの試作を経て棒で操る人形になった

ミューレンは、最初に人が中へ入る方式を試し、その後ロッドで操作する人形へ進んだと回想しています。撮影速度を変えたり、逆再生を試したりして、操っている人の手の動きを感じさせない表現を探しました。

制作資料:StarWars.com公式解説

森を歩いて毎秒1コマで撮影し、猛スピードの映像に変えた

同じ公式インタビューでは、複数の場所で前方へ進む背景を集め、よいショットを選んだことも説明されています。横方向の映像とは撮り方を分け、必要な視点に合わせて方法を変えていました。

制作資料:StarWars.com公式解説

『Revenge』から『Return』へ、原題を変えた理由

公式の予告編解説には、仮題が『Revenge of the Jedi』だったことと、ジェダイは復讐を求めないという考えから『Return』へ変更されたことが記されています。復讐して敵を倒すことが、ジェダイの目指す道なのか。題名の変更は、ルークの最後の選択を考える手掛かりにもなります。

制作資料:StarWars.com公式解説

人と比べると大きさが分かるプレーリー・クリークの巨木。撮影地域の景観の参考資料です。
人と比べると大きさが分かるプレーリー・クリークの巨木。撮影地域の景観の参考資料です。
写真:rachel_thecat / Wikimedia Commons / CC BY-SA 2.0

ここからネタバレあり|結末・テーマの考察

ルークが剣を捨てたのは、父と同じ道を歩まないため

ルークはベイダーを追い詰めます。しかし、切り落とされた父の機械の手と自分の手を見て、怒りのまま倒す先にある姿に気づきます。強くなったことを証明するだけなら、そのまま戦えばいい。そこから止まるほうに、別の難しさがあります。

武器を捨てたルークが、皇帝の攻撃に対して無防備になることも映画は隠しません。優しさを選べばすぐ安全になる、という話ではない。自分の選択の危うさを引き受ける。強さを見せつけるより、怒りに流されないことを選ぶ。そこに、冒険を経て成長したルークの姿が見えます。

息子を救ったベイダーを、過去の罪も含めてどう見るか

ベイダーが息子を救うことは、帝国の行いへの全面的な赦しと同じではありません。本人が犯したことは消えない。それでも、最後の場面で何を選ぶかまで、過去だけで決まりきっているわけではない。そこに小さな救いがあります。

ルークは、相手を都合のよい父親に作り替えたのではありません。相手の中にまだ別の選択があると信じた。その願いが一度だけ届くからこそ、顔を合わせる短い時間が大切に見える。銀河の勝利と、親子の別れを同じ結末に収めた作品です。

『ジェダイの帰還』は、強さを手に入れたあと何を選ぶかを問う

怪物やバイクチェイスを楽しんでいたはずが、最後は「どこで力を使うのをやめるか」という問いが残る。『ジェダイの帰還』は、壮大な冒険を、強さだけでは説明できない選択で閉じます。模型や人形の工夫を知る楽しさと、もう一度あの親子に会いたくなる気持ちが、同じ一本の中にあります。

ほかのスター・ウォーズ作品も読む

同じシリーズの前後をたどると、人物の表情や台詞の受け止め方も変わります。初めて観る場合は、旧三部作の4→5→6、新三部作の1→2→3という公開順も選択肢です。

参考資料・出典

制作上の事実は公式資料を中心に照合し、作品の受け止め方を考える際に日本語レビューも参照しています。本文の解釈・管理人コメントは当サイトの批評であり、制作者の意図を断定するものではありません。