帽子と鞭が似合う考古学者。そう聞くと、何でも見抜いて危機を切り抜ける人を想像します。でも『レイダース』のインディは、かっこよく決めたと思った直後に、また追われ、殴られ、慌てて走っています。
この少し情けないところが、冒険を面白くするんです。知識も度胸もあるのに、予定どおりには進まない。こちらがひと息つく前に次の厄介事が来るので、気づけば彼と同じように、目の前の危機に夢中になっています。
※前半は結末に触れずに紹介し、後半の考察ではネタバレを含みます。
あらすじ
1936年。考古学者インディアナ・ジョーンズは、神秘的な力を持つとされる「アーク」をナチスが探していると知ります。彼はその手がかりを追い、かつて関係のあったマリオンを訪ねます。
古い遺跡、砂漠の発掘現場、追跡する敵。マリオンと再会したインディは、秘宝の争奪戦に巻き込まれていきます。
基本情報
| 作品名 | レイダース/失われたアーク《聖櫃》 |
|---|---|
| 原題 | Raiders of the Lost Ark |
| 製作年 | 1981年 |
| 製作国 | アメリカ |
| 監督 | スティーヴン・スピルバーグ |
| 主な出演者 | ハリソン・フォード、カレン・アレン、ポール・フリーマン |
| ジャンル | アクション |
『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』が不朽の名作といわれる理由3選
1. 冒頭から、失敗まで含めてインディを好きになる

遺跡に入るインディは、危険の見つけ方も、進むときの身のこなしも手慣れています。台詞で有能だと説明しなくても、この人はこういう場所を歩いてきたのだと分かる。まず、その姿に乗せられます。
ところが、慎重に動いても罠は作動し、脱出できたと思っても、欲しかったものが手元に残るとは限りません。腕が立つことと、すべてうまく運べることを分けているんです。
大きな岩から逃げる姿には、余裕がありません。その必死さがいい。帽子をかぶった決め姿だけなら遠い英雄ですが、慌てる顔まで見えることで、次も何とかしてほしくなります。
2. 一つの危機が、次の危機の入口になる

追われる、閉じ込められる、乗り物を奪い合う。場面ごとに、身体の使い方も、逃げる方向も変わります。同じ勝負を繰り返すのではなく、場所が変わるたびに違う困り方があるんです。
トラックを追う場面では、前に回れば安心というわけでも、しがみつけば助かるというわけでもない。動いている車と人の位置が、次の危険を作っていきます。説明を聞くより先に、画面を見て身体が反応します。
ジョン・ウィリアムズの音楽が高揚を支えますが、絵の中に何があるかも分かりやすい。いま何を避けたいのか、何をつかみたいのか。その目的が見えるから、速い展開に置いていかれません。
3. マリオンが、助けを待つだけの相手ではない

マリオンは、インディの都合に合わせて喜んで旅に加わる人ではありません。二人には過去があり、再会しても、彼女の怒りは簡単に消えない。主人公を好意的に見る人ばかりにしないことで、インディの顔も少し違って見えます。
危険の中で彼女は、自分で相手を見たり、交渉したり、逃げる機会を探したりする。巻き込まれる場面はあっても、感情まで主人公任せにはなっていません。
二人が言い合う時間があるから、冒険は遺物を取り合うだけの話にならない。互いを頼りながら、まだ腹も立っている。そんなやり取りが、荒唐無稽な旅に人の温度を残しています。
ここからネタバレあり|結末・テーマの考察
最後に必要なのは、知識を増やすことより目を閉じること
終盤、アークを開いた人々の前で、インディはマリオンに目を閉じるよう促します。何があるのか確かめたい冒険家が、最後には見ないことを選ぶ。この反転が印象的です。
物語のあいだ、アークは所有すれば力になるものとして争われます。けれど、その力は人間の思惑に従いません。秘宝を手にした人がそのまま勝者になるわけではない、という怖さが、冒険の決着を大きくしています。
倉庫のラストが、達成感を少しずらす
あれほど争われたアークは、最後には木箱に入れられ、巨大な倉庫の一つとして運ばれていきます。危機を生き抜いた実感と、その後のあっけない扱いの差がおかしい。
主人公が手に入れたものを飾って終わらず、知らないことがまだ世界に埋もれているような景色を残す。旅は終わったのに、好奇心は閉じない。その余韻まで、冒険映画らしいんです。
よくある疑問
シリーズ未見でも楽しめる?
1981年に公開されたシリーズ第1作なので、ここから観られます。人物の背景を予習するより、最初の遺跡でインディがどう動くかを見て入るのがおすすめです。
怖い場面はある?
蛇や遺体が出る場面、終盤の強い身体損壊描写があります。軽快な冒険活劇ですが、全編が子ども向けの穏やかな調子というわけではありません。
おわりに
立派な冒険家の武勇伝というより、ひどい目に遭っても前へ進む人に付き合う楽しさがあります。疲れて、腹を立てて、それでも次の危機に向かう。インディのその忙しさが、何度観ても退屈させません。
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