頑張ったのに、何もかもうまくいくわけではなかった。『帝国の逆襲』を観終わると、華やかな勝利のあとにはなかった感情が残ります。腕は上がった。大事な人もできた。それなのに、前より世界が分からなくなってしまう。
シリーズでもとくに愛される作品ですが、魅力を大どんでん返し一つで説明するのは、少しもったいない。故障続きの宇宙船で交わされる会話も、気難しい小さな師匠も、追われ続けて息をつく暇もない展開も、この映画ならではの魅力です。
ここでは、ヨーダを「共演者」にした人形の演技、金属加工の現場から作られたAT-ATの音、ノルウェーの雪景色にも注目します。あの結末を知っていても、観直すたびに気づく面白さが残っています。
前半は核心的な結末を伏せて紹介します。「ネタバレ考察」以降は本作の結末に触れます。シリーズ未見の方は、各作品の考察部分と予告映像の視聴順にご注意ください。
あらすじ
デス・スターを破壊した反乱同盟軍は、帝国の追撃を逃れ、氷の惑星ホスに基地を構えていました。しかし、帝国軍はその居場所へ迫り、ルークたちは再び離れ離れになります。
オビ=ワンの導きに従い、ルークは惑星ダゴバでジェダイ・マスターのヨーダに教えを求めます。一方、ハンとレイアはファルコン号で追撃をかわし、ハンの旧友ランドが治めるクラウド・シティへ向かいます。
基本情報
| 作品名 | スター・ウォーズ/帝国の逆襲(エピソード5) |
|---|---|
| 原題 | Star Wars: Episode V — The Empire Strikes Back |
| 製作年 | 1980年 |
| 製作国 | アメリカ |
| 監督 | アーヴィン・カーシュナー |
| 主な出演者 | マーク・ハミル(ルーク)、ハリソン・フォード(ハン・ソロ)、キャリー・フィッシャー(レイア)、ビリー・ディー・ウィリアムズ(ランド)、フランク・オズ(ヨーダの声・人形操演) |
| 音楽 | ジョン・ウィリアムズ |
| ジャンル | SF/アクション/アドベンチャー |
『帝国の逆襲』の見どころ3選
1. 故障続きのファルコン号で、ハンとレイアの距離が縮まる
前作の冒険では、知らなかった人たちが一緒になりました。今回は、互いの性格を知った人たちが、狭い船で逃げ続けます。危機の最中でも口げんかが起きるし、相手の心配を素直には口にできない。関係ができたあとの面倒くささが増えています。
ハンとレイアの応酬は、軽口だけを抜き出すと気の強い者同士のやり取りに見えます。でも、修理や逃走の合間に置かれると、相手の存在をずっと意識していることが分かる。立ち止まれない時間の中で、少しずつ距離が変わっていくのです。
ファルコン号の故障は、危機を増やすだけでなく、二人の関係も動かします。予定どおりに進まない乗り物が、人を同じ場所にとどめ、会話させる。宇宙の大きさとは対照的な、狭い船内で相手を意識せずにはいられない二人の距離が、魅力になっています。
2. ヨーダの視線と間に、「そこにいる」と思わされる

写真:CyberK no / Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0
初登場のヨーダは、落ち着いた賢者というより、ルークの調子を乱す奇妙な相手です。教えを受ける前に、こちらの期待のほうが試される。強い先生なら見た目も態度も立派なはず、と思い込んでいるのはルークだけではありません。
その人物を信じさせたのが、フランク・オズらの人形操演でした。視線、口、沈黙の小さな変化がつながり、ルークの言葉を聞いて、何かを考えているように見える。立派な教えを語るからだけでなく、相手の話を聞く姿にまで意志を感じられる。だから、一人の登場人物として信じられるのです。
ルーカスの公式回顧では、カーシュナー監督が、下で操作するオズではなくヨーダ自身へ話しかけることもあったと紹介されています。操演の巧さに驚く話であると同時に、現場全体がこの相手の存在を受け入れていたことを感じさせます。
3. AT-ATの遅い一歩が、逃げ場を奪っていく
ホスのAT-ATは、速く動き回る敵ではありません。遠くから、重い足を一歩ずつ運んでくる。それに小さな戦闘機で向かう反乱軍を見ていると、力の差が理屈より先に伝わります。
その重量感には音が深く関わっています。公式の制作記事によると、足音には金属加工現場の大型機械を録音した素材が使われ、関節のきしみにはごみ容器のふたの音も利用されました。重そうな姿を、重く聞こえる細部が支えているのです。
雪原の広さ、ウォーカーの遅さ、小さな機体の必死さ。速度も大きさも違う者同士がぶつかるから、反乱軍の不利がはっきり見える。敵の数よりも、この力の差が追い詰められる怖さを生んでいます。
知ると見直したくなる豆知識・撮影秘話
ホスの兵士役には、現地のホテルスタッフも参加
公式の制作トリビアでは、美術監督アラン・トムキンズの写真を手掛かりに、ホスの兵士を女性も演じていたと紹介しています。ノルウェーでの撮影では、地元のエキストラに加え、ホテルのスタッフまで参加したそうです。
制作資料:StarWars.com公式解説
ルーカスも、撮影した映像を見るまでヨーダの成功を確信できなかった
ルーカスは、照明を当てて実際に撮った映像を見て、ようやくヨーダが成立すると確信したと振り返っています。いまや当然に感じる存在も、最初から成功が約束されていたわけではありません。
制作資料:StarWars.com公式解説
AT-ATの足音は大型機械、関節の音はごみ容器のふた
録音担当のランディ・トムは、金属を切断・加工する大型機械の音を収録しました。バートは、その音を歩くリズムに合わせて組み直し、さらに関節のきしみを加えました。大きな音を一発鳴らすのではなく、動作を段階ごとに聞かせる工夫です。
制作資料:StarWars.com公式解説

写真:Robert.bohlen (Robert Bohlen) at de.wikipedia / Wikimedia Commons / Public domain
ここからネタバレあり|結末・テーマの考察
仲間を助けたい気持ちが、ルークの判断を危うくする
仲間の危機を感じたルークは、修行を終えずに向かいます。結果を知っていれば軽率だと言えますが、助けに行かずに待つことが、本人にとって簡単だったはずもありません。大切な人を守りたいという、英雄として好ましい気持ちが、ここでは判断を難しくします。
だから、教えに従えなかった生徒の失敗だけでは終わらない。正しいと思う行動にも、自分の力量や相手の意図を見誤る危うさがある。善意があれば勝てるという前作の勢いを、その内側から揺さぶる展開です。
ベイダーの告白が、ルークの信じてきた家族像を崩す
ベイダーの告白によって、ルークは敵を倒すために強くなる、という目標だけでは進めなくなります。相手の正体を受け入れることは、自分が信じてきた家族の物語も疑い直すことだからです。
名場面を先に知っていても、そこに至るまでのルークの自信と焦りを追うと、衝撃は違った形で戻ってきます。最後に残るのは全面的な勝利ではなく、傷を抱えたまま仲間と同じ方向を見る姿。勝てなかったあと、何を信じて先へ進むのか。その問いを残すから、この続編は長く心に残ります。
『帝国の逆襲』は、勝てなかった時間まで心に残る
『帝国の逆襲』は、前作の楽しかった部分を捨てて暗くした作品ではありません。仲間の会話や手作りの生き物の魅力をさらに深めたうえで、努力しても答えが出ない時間へ連れていく映画です。大人になって見直すほど、勝利より長く残るものが増えていきます。
ほかのスター・ウォーズ作品も読む
同じシリーズの前後をたどると、人物の表情や台詞の受け止め方も変わります。初めて観る場合は、旧三部作の4→5→6、新三部作の1→2→3という公開順も選択肢です。
参考資料・出典
制作上の事実は公式資料を中心に照合し、作品の受け止め方を考える際に日本語レビューも参照しています。本文の解釈・管理人コメントは当サイトの批評であり、制作者の意図を断定するものではありません。