スター・ウォーズ エピソード3考察|アナキンはなぜ闇に堕ちたのか

結末を知っているのに、途中で「そっちには行かないで」と思ってしまう。『シスの復讐』のつらさは、悪役が完成する瞬間より、まだ引き返せそうに見える時間の長さにあります。

アナキンをただ愚かな青年として見るのは簡単です。ただ、失いたくない相手がいて、自分の力なら何とかできるはずだと思い、耳の痛い忠告より安心できる言葉を選んでしまう。そうして忠告を遠ざけてしまう気持ちは、遠い銀河の話として片づけにくいものがあります。

アナキンは、どこで引き返せなくなったのでしょうか。師弟の会話や決闘を手掛かりに、その変化を考えます。息の合った飛行を演出した冒頭の宇宙戦や、本物の噴火映像を使ったムスタファーなど、悲劇を支えた映像づくりにも注目します。

前半は核心的な結末を伏せて紹介します。「ネタバレ考察」以降は本作の結末に触れます。シリーズ未見の方は、各作品の考察部分と予告映像の視聴順にご注意ください。

あらすじ

クローン大戦が続く銀河。アナキンとオビ=ワンは、分離主義勢力に捕らわれたパルパティーン最高議長の救出へ向かいます。二人は息の合った行動で任務に挑みますが、戦争はジェダイと共和国の関係も変えつつありました。

アナキンはパドメとの未来を思う一方、彼女を失うかもしれないという恐れに苦しみます。ジェダイ評議会と議長の間に挟まれた彼に、パルパティーンは別の力の可能性を語り始めます。

基本情報

作品名スター・ウォーズ/シスの復讐(エピソード3)
原題Star Wars: Episode III — Revenge of the Sith
製作年2005年
製作国アメリカ
監督ジョージ・ルーカス
主な出演者ヘイデン・クリステンセン(アナキン)、ユアン・マクレガー(オビ=ワン)、ナタリー・ポートマン(パドメ)、イアン・マクダーミド(パルパティーン)
音楽ジョン・ウィリアムズ
ジャンルSF/アクション/アドベンチャー

『シスの復讐』の見どころ3選

1. 息の合った師弟の姿を知るほど、決別がつらくなる

スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐 日本語公式予告編。ディズニーの日本向け公式チャンネルによる映像。予告編には本編の場面が含まれます。YouTubeで見る

冒頭の宇宙戦では、アナキンとオビ=ワンが軽口を交わしながら危機を切り抜けます。小言はあるけれど、相手の腕を疑っていない。前作でぶつかっていた師弟が、戦場を一緒に抜けてきた仲間になったことが、動きと会話から伝わります。

公式に再公開された撮影日誌には、ルーカスが、冒頭の二機をぴったり息の合った動きにしたがったという記録があります。たまたま同じ方向を向くのではなく、よいチームであることを飛び方で示そうとしていたのです。

この時間があるから、後の衝突を「最初から相性の悪い二人だった」で片づけられなくなります。互いを大切にできた日が、ちゃんとあった。失われる関係を先に楽しませてくれるところが、この作品の残酷でうまい部分です。

管理人
ずっと険悪だった二人なら、別れても仕方ないと思えるんです。でもこの二人には、相手がいるから少し無茶できる空気がある。あの息の合い方を覚えているから、終盤で剣を交えるときに「本当に、ここまで来てしまったのか」と感じます。

2. 「大切な人を失いたくない」という願いが、アナキンを追い詰める

エトナ山の噴火を2012年4月に撮影した写真。本編に合成された2002年の映像とは別の資料です。
エトナ山の噴火を2012年4月に撮影した写真。本編に合成された2002年の映像とは別の資料です。
写真:Walter Isack (isiwal) / Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0 at

アナキンが欲しいのは、最初から銀河を支配する権力だけだったわけではありません。身近な人を失わない保証がほしい。しかし、その願いを自分の言葉で相談しにくい立場にいる。強いジェダイであることと、一人で不安を処理できることは違うのに、彼はそこを切り離せません。

評議会への不信と、パルパティーンからの承認が重なるにつれ、忠告の聞こえ方も変わっていきます。反対されると、自分を理解しない相手に見える。都合のよい話をしてくれる人だけが、本当の味方に思えてしまう。

もちろん、苦しんでいたことは加害の免罪符にはなりません。それでも、本人の中では守るための選択が積み上がっている。不安にはうなずけても、選んだ行動は受け入れられない。その両方を感じさせるから、アナキンの転落を簡単には見過ごせません。

管理人
不安なときほど、「それは難しい」と言う人より「君ならできる」と言う人に会いたくなりますよね。そこまでは分かってしまう。でも、その安心のために誰を傷つけているのか。この映画は、その問いをこちらにも残してきます。

3. ムスタファーの決闘は、勝敗よりも二人の別れがつらい

ムスタファーの決闘は、速さと長さだけでも見応えがあります。けれど、そこまでに積み重なった関係を考えると、技を競う以上の場面に見えます。互いをよく知っているから攻撃を防げる。その親密さが、そのまま戦いを長引かせる。

背後の溶岩も、ただ派手な舞台装置として置かれているのではありません。立ち止まって落ち着いて話せる場所が、どんどんなくなっていく。足場が流れ、距離が変わり、言葉を交わしても戻れない。画面全体が二人の関係を追い詰めるように感じられます。

制作には実際の火山の噴火映像も用いられています。俳優が溶岩のそばで決闘したのではなく、撮影素材と特撮を組み合わせた表現です。人工的に設計された動きの後ろに、制御できない自然の怖さが重なる。自然の激しさが加わることで、決闘の舞台に近寄りがたい迫力が生まれています。

管理人
剣の勝ち負けより、もう同じ場所へ帰れないことのほうがつらいんです。相手の癖が分かるくらい一緒にいたのに、その知識を相手を止めるために使わなければいけない。二人の強さを知っているほど、気持ちよくは見られない決闘です。

知ると見直したくなる豆知識・撮影秘話

ムスタファーの噴火には、実際のエトナ山の映像を使用

公式トリビアは、2002年11月のエトナ山の噴火に撮影班を送り、その映像をILMの模型撮影やデジタル映像と組み合わせたと紹介しています。本記事のエトナ山写真は別の年の記録写真で、実際に映画で使った撮影素材ではありません。

制作資料:StarWars.com公式解説

オビ=ワンを背負う場面には、実物大の人形を使った

救出場面のため、ユアン・マクレガーを模した実物大の人形が作られました。壮大なデジタル映像の裏に、共演者を模した人形も使われていたと知ると、大掛かりな救出劇の見え方が少し変わります。

制作資料:StarWars.com公式解説

スピルバーグも、決闘シーンの事前映像づくりに参加

スティーヴン・スピルバーグは、ムスタファーの決闘などのプリビズ、つまり撮影やVFXの前に動き・構図を試す映像づくりに参加しました。「決闘を丸ごと監督した」と言い換えてしまうと、本来の仕事の範囲とずれてしまいます。

制作資料:StarWars.com公式解説

国際宇宙ステーションから撮影されたエトナ山の噴火。火山の規模を示す参考写真で、映画の撮影素材ではありません。
国際宇宙ステーションから撮影されたエトナ山の噴火。火山の規模を示す参考写真で、映画の撮影素材ではありません。
写真:NASA / Wikimedia Commons / Public domain

ここからネタバレあり|結末・テーマの考察

削除シーンから見える、政治家としてのパドメ

公式に紹介されている削除シーンには、パドメやベイル・オーガナ、モン・モスマらが、パルパティーンの権力拡大を危惧して話し合う場面があります。パドメを、アナキンが失うことを恐れる相手としてだけでなく、政治家として捉え直す手掛かりになります。

ただし、これは劇場版本編に残った出来事として混ぜて説明するべきではありません。本編に描かれた出来事と、制作途中で検討された場面は分けて考える必要があります。そのうえで削除シーンを見ると、パドメが恋人の変化だけでなく、共和国の危機にも向き合っていたことが分かります。

双子の誕生とベイダーの誕生が、希望と喪失を同時に描く

双子の誕生と、ダース・ベイダーの姿が出来上がる過程が交互に描かれます。新しい命が生まれる一方で、一人の人間が機械の中へ閉じ込められていく。どちらも誕生なのに、画面から受ける感触はまるで違います。

ラストが『新たなる希望』へつながることは救いです。けれど、未来を知っているから今の犠牲を軽くできるわけではない。子どもたちへ何かを託すところまでしか、この人たちは進めなかった。犠牲の大きさを知ったあとでは、旧三部作で子どもたちが歩む道も、以前とは違って見えてきます。

『シスの復讐』は、結末を知っていても引き止めたくなる

派手な決闘を目当てに戻ってきても、最後に残るのは、関係を壊す前に交わせたかもしれない会話です。『シスの復讐』は、闇の力の恐ろしさと同じくらい、不安を一人で抱え込み続ける怖さを描く作品。その痛みがあるから、結末を知っていても目を離せません。

ほかのスター・ウォーズ作品も読む

同じシリーズの前後をたどると、人物の表情や台詞の受け止め方も変わります。初めて観る場合は、旧三部作の4→5→6、新三部作の1→2→3という公開順も選択肢です。

参考資料・出典

制作上の事実は公式資料を中心に照合し、作品の受け止め方を考える際に日本語レビューも参照しています。本文の解釈・管理人コメントは当サイトの批評であり、制作者の意図を断定するものではありません。