味方の軍隊が到着したのに、なぜか安心しきれない。『クローンの攻撃』には、そんな妙な後味があります。目の前の危機を切り抜けるために必要だった力が、もっと大きな不安の始まりにも見えてくるのです。
一方で、アナキンとパドメの恋愛はかなり不器用です。甘い台詞に入り込めない、話の途中で雰囲気が変わりすぎる、と感じるのも無理はありません。ただ、そのぎこちなさを無理に美化せず、他人に認められたい青年の焦りとして追うと、別の見え方もあります。
探偵もののようなオビ=ワンの調査、ナブーでの恋、そして戦争への突入。三つの物語が合流するとき、何が起きるのか。場面ごとの魅力に加え、撮影を支えた試作のデジタルカメラやミニチュアの話も紹介します。
前半は核心的な結末を伏せて紹介します。「ネタバレ考察」以降は本作の結末に触れます。シリーズ未見の方は、各作品の考察部分と予告映像の視聴順にご注意ください。
あらすじ
ナブーの危機から10年。分離主義運動に揺れる銀河共和国で、元老院議員パドメ・アミダラの暗殺未遂事件が起きます。オビ=ワンと、成長した弟子アナキンが彼女の警護を任されます。
アナキンはパドメとナブーへ向かい、二人の距離が近づいていきます。その一方、犯人を追うオビ=ワンは、記録から消えた惑星カミーノにたどり着きました。そこで彼が見つけたのは、共和国のために製造されたという大規模なクローン軍でした。
基本情報
| 作品名 | スター・ウォーズ/クローンの攻撃(エピソード2) |
|---|---|
| 原題 | Star Wars: Episode II — Attack of the Clones |
| 製作年 | 2002年 |
| 製作国 | アメリカ |
| 監督 | ジョージ・ルーカス |
| 主な出演者 | ヘイデン・クリステンセン(アナキン)、ユアン・マクレガー(オビ=ワン)、ナタリー・ポートマン(パドメ)、クリストファー・リー(ドゥークー) |
| 音楽 | ジョン・ウィリアムズ |
| ジャンル | SF/アクション/アドベンチャー |
『クローンの攻撃』の見どころ3選
1. オビ=ワンの調査で、クローン軍の不気味さが見えてくる
暗殺者の残した手掛かりをたどり、知り合いに話を聞き、図書館で星を探す。序盤のオビ=ワンは、銀河を舞台にした探偵のようです。大事なのは、武器を持って相手を倒す場面より、目の前にある情報を疑う時間が長いこと。
カミーノに着くと、歓迎され、説明を受け、整然と並ぶ軍隊を見せられます。分からなかったことが分かったはずなのに、場面はすっきりしない。誰が何のために頼んだのかという疑問を残したまま、完成した巨大な仕組みだけがそこにあります。
正体の分からない軍隊が、いつでも出動できる状態で待っている。その怖さは、目の前の強敵と戦う緊張とは違います。主人公が事件の中心に近づくほど、自分たちの知らないところで決まったことの多さに気づく。観直すと、丁寧な説明を受ける場面にさえ、何かを隠されているような不安が漂います。
2. 美しいナブーでも、アナキンは恋を急ぎすぎる

写真:MarkusMark / Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0
湖や庭園を背景にすると、普通なら二人の恋はそれだけでうっとりしたものに見えます。ところがアナキンは、なかなか落ち着けません。実力を認めてもらいたい、相手の心を確かめたい、自分の手で物事を変えたい。その気持ちが会話の端々からはみ出します。
その未熟さは、恋の初々しさとして微笑ましく見えるところばかりではありません。相手の言葉を待てず、自分の強さを語りすぎる。観ていて居心地が悪くなる瞬間も、人物の危うさを考える入口になります。
ナブーの湖畔の場面には、イタリアのヴィラ・デル・バルビアネッロが使われました。建物を管理するFAIも撮影地として紹介しています。現実の穏やかな風景があるから、そこで話すアナキンの焦りが、余計に目立ちます。
3. 援軍が来たのに、素直に喜べない戦争の始まり
終盤はジェダイ、ドロイド、クローン軍が入り乱れる大規模な戦いになります。ここまで人数の少ない調査や警護を追ってきたぶん、画面が一気に戦場へ広がる感覚には迫力があります。
けれど、アクションが盛り上がるほど、別の疑問も浮かぶ。誰が望んでこの戦争を始めたのか。助けに来た軍隊を、いつから自分たちのものだと考えたのか。その問いが、活躍を楽しむ気持ちの後ろについてきます。
ヨーダの戦いぶりだけを目当てに見直しても楽しい作品です。ただ、強い人が登場して場面が解決することと、銀河がよい方向へ進むことは同じではない。そこに気づくと、つなぎの一作と片づけにくくなります。
知ると見直したくなる豆知識・撮影秘話
試作のデジタルカメラ4台が、撮影開始の数日前に届いた
ルーカスフィルムの公式回顧によると、ソニーと開発したデジタルシネマカメラ4台は、撮影開始のわずか数日前に到着しました。24コマ毎秒で撮影するための機材を整え、現場側も新しい仕事の進め方を覚える必要がありました。
制作資料:StarWars.com公式解説
その場で映像を確認できる撮影が、スタッフの仕事を変えた
本作では高精細な映像を撮影中にモニターで確認でき、メイクや美術の担当者もその場で調整に参加できました。「デジタルだからCGが多い」だけでなく、スタッフが結果を共有する時間そのものが変わったのです。
制作資料:StarWars.com公式解説
デジタル撮影でも、精巧なミニチュアが活躍した
ILMは精巧なミニチュアセットの撮影にもデジタルカメラを使用しました。撮影方式の変化と、画面に映るものをどう作ったかは別の話。「この一作から全部CGになった」という理解では、現場の工夫を取りこぼしてしまいます。
制作資料:StarWars.com公式解説

写真:Phyrexian / Wikimedia Commons / CC BY-SA 4.0
ここからネタバレあり|結末・テーマの考察
クローン軍は仲間を救い、銀河を戦争へ向かわせる
ジオノーシスから脱出するために、クローン軍は確かに必要でした。しかし、仲間を救えたからといって、共和国の危機まで去ったわけではありません。ヨーダが戦争の始まりとして受け止めることで、観客もさっきまでの興奮を振り返ることになります。
敵の策略を見抜き、正しい選択を重ねれば破局を避けられた、という単純な構図でもない。目の前の人を助ける判断が、大きな仕組みの中では別の働きをしてしまう。その怖さが、戦争の入口を描く作品としての強みです。
二人だけの結婚が、誰にも相談できない未来につながる
ラストの結婚は、愛が成就した幸福な時間です。同時に、二人が周囲へ相談しにくくなる始まりでもあります。ジェダイの規律との衝突を、ひとまず秘密にすることでしか解決できなかった。その条件が、甘い風景の中に残っています。
これを最初から間違った恋と断定するより、喜びが確かにあったことを覚えておきたい。失うものが大きくなるからこそ、のちの不安も切実になる。幸せな記憶まで否定しないところに、この悲劇を追う意味があります。
『クローンの攻撃』は、戦争が始まる怖さを描く映画
ミステリーとして手掛かりを追い、恋愛のぎこちなさに少し立ち止まり、最後に援軍の到着を疑ってみる。『クローンの攻撃』は、英雄が戦争で活躍する話というより、英雄たちも戦争の始まりを止められなかった話として観ると、印象が深まります。
ほかのスター・ウォーズ作品も読む
同じシリーズの前後をたどると、人物の表情や台詞の受け止め方も変わります。初めて観る場合は、旧三部作の4→5→6、新三部作の1→2→3という公開順も選択肢です。
参考資料・出典
制作上の事実は公式資料を中心に照合し、作品の受け止め方を考える際に日本語レビューも参照しています。本文の解釈・管理人コメントは当サイトの批評であり、制作者の意図を断定するものではありません。