制服を着て、話し方を変える。それだけで、さっきまで子どもだった人が、信用される側に回ってしまう。『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』は、その危なっかしい身軽さが楽しい映画です。
ところが、逃げるのが上手になるほど、フランクの生活は寂しく見えてきます。立派な肩書は手に入るのに、何も演じずに会える相手は減っていく。軽快な追いかけっこの裏に、家へ帰りたい少年の顔があるのが、この映画の忘れにくいところです。
※前半は結末に触れずに紹介し、後半の考察ではネタバレを含みます。
あらすじ
両親の関係が壊れていくなかで家を出たフランク・アバグネイル・Jr.は、身分を偽り、小切手を使った詐欺に手を染めます。パイロット、医師、弁護士。若さを隠し、相手の思い込みを利用して、別人の生活へ入り込んでいきます。
FBI捜査官カール・ハンラティは、その足取りを追い始めます。逃げる少年と、捕まえようとする大人。二人の関係は、追跡を繰り返すうち、逮捕だけでは説明しにくいものへ変わっていきます。
基本情報
| 作品名 | キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン |
|---|---|
| 原題 | Catch Me If You Can |
| 製作年 | 2002年 |
| 製作国 | アメリカ |
| 監督 | スティーヴン・スピルバーグ |
| 主な出演者 | レオナルド・ディカプリオ、トム・ハンクス、クリストファー・ウォーケン |
| ジャンル | クライム/ヒューマンドラマ |
『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』が不朽の名作といわれる理由3選
1. 肩書を信じてしまう人の顔が、次々に見える

フランクは、新しい学校で教師を装います。用意された大きな計画があるというより、その場の空気と相手の期待を読んで、そういう人として振る舞ってしまう。その速さに驚かされます。
レオナルド・ディカプリオの顔には、うまく乗り切ったときの得意さと、次に何を聞かれるか分からない緊張が一緒にあります。何でも知っている人ではなく、知らないことを知られないように動く少年なんです。
それが成立するのは、周りの人も、制服や肩書から先に相手を判断するからです。フランクの器用さを笑いながら、自分なら本当に気づけるだろうかとも思う。その少し嫌な身近さが、詐欺の場面を面白くしています。
2. 華やかな生活の中で、子どもの顔がふいに出る

フランクの周囲には、金や制服に引かれる人が集まります。彼自身も、その反応をよく知っていて、相手の望む姿へ近づきます。場面は明るく、話は軽やかです。
ただ、父親と会うときの彼は、違うものを求めています。自分の成功を見せたいし、家族が元へ戻る可能性も手放せない。別人の名前で大人をだます人が、父の前では、よい知らせを持って帰りたい子どもに見えます。
クリストファー・ウォーケンの演技にも、誇らしさと頼りなさが同居しています。父が息子を支えるだけでなく、息子も父の自信を支えようとしている。その関係が、逃走の勢いに寂しさを混ぜています。
3. 追うカールが、フランクを見失わない大人になる

カールはフランクほど華やかな人ではありません。地道に記録を追い、だまされれば腹を立て、また調べ直します。トム・ハンクスの演じるその粘りが、軽やかな逃走との釣り合いを取っています。
二人のクリスマスの電話には、追跡とは別の緊張があります。電話をかける理由を取り繕っても、その夜に話す相手が必要だったことが伝わる。正体を暴こうとする人が、同時に正体を知っている数少ない相手でもあるんです。
仲よくなって事件を忘れるわけではありません。それでも、捕まえる対象として見続けた時間が、彼をどう扱うかという関心に変わる。その変化が、物語を逃げ切れるかどうかの勝負から先へ進めます。
ここからネタバレあり|結末・テーマの考察
逃走を終えることが、何者かになる入口になる
逮捕されれば、それまで演じてきた肩書は崩れます。ただ、映画はそこでフランクの能力まで無価値にはしません。偽造を見抜く目や、仕組みの弱さに気づく力を、別の仕事へつなげていきます。
逃げ続けて人から見えなくなるより、来週も同じ場所へ戻ることのほうが難しい。その約束をカールが示すから、働く場面に救いが生まれます。刑罰がなくなるのではなく、過去のあとにも関係を続けられる道が見える結末です。
「実話だからすごい」だけで見終えたくない
本作は、実在するアバグネイルの自伝を原案とした劇映画です。本人の語りをもとに作られた物語と、すべてが検証された記録映画とは区別して観たいと思います。
史実の量を驚きの中心に置かなくても、家族の崩壊から目をそらそうとする少年と、彼を追う大人の関係には読み応えがあります。本文でも、フランクの心理は映画の人物描写として考察しています。
よくある疑問
楽しい犯罪映画?
軽快な逃走とユーモアを楽しめますが、家族の離別や孤独も大きな要素です。詐欺の成功をひたすら痛快に描く作品とは、少し違います。
オープニングも見どころ?
人物のシルエットや線を使ったタイトル映像と、ジョン・ウィリアムズの音楽が、追う・逃げるという関係を先に見せます。物語に入る前から、軽やかさと落ち着かなさが伝わる導入です。
おわりに
逃げるのをやめたら、何も残らない。その不安を、フランクは抱えているように見えます。だから、同じ名前で明日も会える相手がいることが、最後には大きく感じられる。軽快なのに、その小さな安心が残る映画です。
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