普通に並ばなくても、名前を言えば席が用意される。誰かと一緒にいるだけで、自分まで特別になった気がする。『グッドフェローズ』は、その気持ちよさをよく知っている映画です。
だからこそ、途中から空気が変わっていくのが怖い。さっきまで一緒に笑っていた人の顔色を、急に確かめなければならなくなる。憧れた世界の内側から、その居心地の変化を見せる名作です。
前半は結末に触れずに紹介します。「感想・結末の考察」からは、重要な展開のネタバレを含みます。
『グッドフェローズ』のあらすじ
少年時代から近所のギャングたちに憧れていたヘンリー・ヒルは、彼らの仕事を手伝い、その世界へ入っていきます。ジミーやトミーと行動を共にし、金と仲間に囲まれた暮らしを手にします。
恋人カレンも、普通の生活とは違う扱いに惹かれていきます。しかし、暴力や犯罪でつながる関係には、安心していられない瞬間が少しずつ増えていきます。
『グッドフェローズ』の基本情報
| 原題 | Goodfellas |
|---|---|
| 製作年・国 | 1990年・アメリカ |
| ジャンル | 犯罪ドラマ |
| 監督 | マーティン・スコセッシ |
| 主な出演者 | レイ・リオッタ、ロバート・デ・ニーロ、ジョー・ペシ、ロレイン・ブラッコ |
作品情報の参照:AFI Catalog:物語・配役・原作、BFI:作品情報。
『グッドフェローズ』が不朽の名作といわれる理由3選
1.ギャングの暮らしを、観客まで憧れるほど魅力的に見せる

画像出典:Warner Bros./公式作品画像
ヘンリーの目を通して見るギャングの世界は、まず華やかです。店では顔が利き、行列を待たずに入れて、周囲から特別扱いされる。カレンを連れてクラブの裏口から入り、客席へ進む長い撮影は、その気分を観客にも味わわせます。
悪いことをする人たちだから近づきたくない、と距離を取らせる前に、楽しそうだと思わせてしまう。ヘンリーの軽快な語りや音楽も、その誘惑を後押しします。後半の怖さが効くのは、こちらも少し、その世界を好きになってしまうからです。
2.ジョー・ペシの演技で、笑い話が急に怖くなる

画像出典:Warner Bros.公式公開動画/サムネイル
トミーが仲間に話をして、ヘンリーが笑う。たったそれだけのやりとりから、場の空気が変わる有名な場面があります。冗談なのか、本当に怒っているのか。ジョー・ペシの目つきと話す間に、周囲も観客も振り回されます。
この人たちと一緒にいれば楽しい、でも機嫌を損ねたら何が起きるか分からない。その危うさを、暴力が起きる前の会話で感じさせるんです。トミーが画面にいるだけで、誰が次に余計なことを言うのか、気になってしまいます。
3.仲間同士の親しさが、少しずつ信用できなくなる

画像出典:Warner Bros.公式公開動画/サムネイル
食事を作り、家族の話をし、冗談を言う。ギャングたちにも普通の生活があるからこそ、彼らの会話には親しみが湧きます。一方で、金や自分の身を守ることが絡むと、その親しさがどこまで通用するのか分からなくなります。
ロバート・デ・ニーロの静かな表情が不穏に見えてくるのも、その変化があるからです。後半は編集や音楽のせわしなさも増し、ヘンリーが落ち着けなくなる感覚が伝わってきます。成功と破滅を遠くから眺めるより、悪い生活に巻き込まれるような映画です。
感想・結末の考察【ここからネタバレ】
最後まで、普通の暮らしに戻りたいとは限らない
保護下で生活することになったヘンリーには、自由になれたという喜びだけがあるわけではありません。特別に扱われていたころを惜しむ気持ちが残っています。そこで反省の物語としてきれいに閉じないのが、この映画らしいところです。
危険だと分かっても、そこで得た扱いを忘れられない。安全な暮らしが、本人には物足りなく感じられる。その感覚まで残すことで、どうして人がこの世界から離れにくいのかが伝わります。
カレンの視点が入ると、憧れの見え方も変わる
ヘンリーの語りだけなら、観客も彼の成功感に流されやすいはずです。カレンの側から見える時間があることで、魅力的に見えた暮らしの中に、支配や不安もあることが分かります。
二人が同じ世界を好きになったとしても、そこで同じ立場にいるわけではありません。夫婦の関係を通しても、誰が何を決められるのかが変わっていく。その差に注目すると、物語の怖さがさらに増します。
作品についてよくある疑問
実話を基にしている?
ニコラス・ピレッジのノンフィクション『Wiseguy』を原作に、実在したヘンリー・ヒルの人生を基にした作品です。ただし、場面や会話をすべて記録どおりと受け取ることはできません。
暴力描写は強い?
突然の暴力や殺人、薬物に関する描写があります。気軽な犯罪コメディを期待すると、強く感じる場面もある作品です。
あわせて観たい作品
「仲間がいる」と「安心できる」が同じではなくなっていく映画です。にぎやかな場面ほど、誰が笑い、誰が相手の反応を見ているかを確かめたくなります。