【なぜ名作?】『ジョーズ』感想・考察|海に入らないでほしい。それだけで、こんなに怖い

晴れた海、遊んでいる子ども、浜辺のざわめき。普通なら気持ちのいい景色なのに、『ジョーズ』では、人が水へ近づくたびに落ち着かなくなります。サメの姿より先に、こちらの目が海面を探し始めてしまうんです。

有名なサメ映画だから、大きな口で襲ってくる場面が中心だと思うかもしれません。でも面白いのは、被害を止めたい人と、町の営業を止めたくない人の話でもあること。怖さの理由が、水の中にも、浜辺の大人たちの会話にもあります。

※前半は結末に触れずに紹介し、後半の考察ではネタバレを含みます。

あらすじ

夏の観光客でにぎわうアミティの海岸で、女性の遺体が見つかります。警察署長ブロディはサメの襲撃を疑い、海水浴場を閉めようとしますが、市長は観光への影響を心配して反対。安全をめぐる判断が遅れるうちに、さらなる被害が起きてしまいます。

ブロディは海洋学者フーパー、サメ漁の経験を持つクイントとともに海へ出ます。専門も性格も違う三人が、小さな船で見えない相手を追うことになります。

基本情報

作品名 ジョーズ
原題 Jaws
製作年 1975年
製作国 アメリカ
監督 スティーヴン・スピルバーグ
主な出演者 ロイ・シャイダー、ロバート・ショウ、リチャード・ドレイファス
ジャンル スリラー/サスペンス

『ジョーズ』が不朽の名作といわれる理由3選

1. 見えない海面を、いつまでも見てしまう

ジョーズ/Movieclips配信映像のサムネイル
画像引用:Movieclips「Jaws (1975) – You're Gonna Need a Bigger Boat Scene (4/10) | Movieclips」(配信映像のサムネイル)

浜辺のブロディは、何も起きていない海から目を離せません。人が横切って視界がふさがるだけでも、こちらはその向こうを確かめたくなる。危険を見せ続けるのではなく、確かめられない時間で緊張を作っています。

ジョン・ウィリアムズの低い旋律も、その不安を強くします。何かが近づいている、と身体が先に反応してしまう。ただし、音楽が鳴ったときだけ警戒していればいいわけではない。油断した会話の途中にも恐怖が入り込むので、気を抜けないんです。

サメが大きいから怖い、だけではありません。どこにいるか分からないのに、人々は普段どおりに遊んでいる。その景色の中に、自分だけが危険を知っているような居心地の悪さがあります。

管理人
浜辺の人たちに「そこ、危ないから」と声をかけたくなるんですよね。でも映画の中では、まだ普通の夏が続いている。観ている側だけが落ち着かない、この時間がうまいです。海面に何も映っていなくても、もう十分に怖い。

2. 市長をただの悪役にして終わらせられない

ジョーズ/Movieclips配信映像のサムネイル
画像引用:Movieclips「Jaws (1975) – Scars Scene (6/10) | Movieclips」(配信映像のサムネイル)

海を閉めれば、人は助かるかもしれない。でも町には、夏の売り上げで暮らしている人がいる。市長の判断は危ういものですが、映画は、その判断が歓迎される背景も見せます。

ブロディは危険を伝えているのに、話が安全の確認から、町の評判や営業の都合へずれていく。ここが嫌に身近です。嫌な情報を聞きたくない場では、慎重な人のほうが空気を悪くする人にされてしまうことがあります。

だから、サメが来たあとだけでなく、来るかもしれないと分かった時点の人間にも緊張がある。全員が事態を知らなかったから起きる悲劇ではないところに、この映画の苦さが残ります。

管理人
自分が署長なら即決できる、と言いたくなります。でも、住民の生活も背負っていると言われたら、簡単な顔ではいられない。その迷いは分かるのに、判断を遅らせる怖さも分かる。市長へのいら立ちだけで済まないのが、よくできています。

3. 小さな船で、三人の嫌なところまで好きになる

ジョーズ/Movieclips配信映像のサムネイル
画像引用:Movieclips「Jaws – Best Scenes」(配信映像のサムネイル)

海へ出ると、町の騒ぎは遠ざかり、三人の会話が中心になります。クイントは自分の経験を譲らず、フーパーは知識で対抗する。ブロディは二人の間で、頼りたいのに頼り切れずにいます。

傷を見せ合って張り合う場面では、大人が急に子どもっぽく見えて可笑しい。そこからクイントの過去の話へ移ると、同じ船の空気が変わります。強気な言葉の奥にあったものが聞こえ、単なる腕自慢では見られなくなるんです。

三人がいつも仲よく協力するなら、船の場面はここまで面白くなかったはず。相手への反感も残ったまま、危険の前ではその人を頼るしかない。その窮屈な距離が、海の広さと反対に、濃い人間関係を作っています。

管理人
知識がある人、経験がある人、町の責任を負う人。誰か一人を正解にしない組み合わせがいいですね。張り合っていて面倒くさいのに、三人で話している時間はもう少し見ていたくなる。だから船が危なくなると、こちらも本気で焦ります。

ここからネタバレあり|結末・テーマの考察

ブロディは、恐怖が消えたから海へ出たわけではない

ブロディは水を怖がっています。そんな人が船に乗るから、観ている側の不安を受け止める役にもなる。平然と危険へ飛び込める英雄ではなく、自分の苦手な場所で責任を果たそうとする人です。

終盤、船の上で頼れるものが次々に失われても、彼は残された道具と状況から手を考えます。成長を「もう怖くなくなったこと」と描かないのがいい。怖がる顔のまま行動するから、最後の一手にも切実さがあります。

決着のあとに残る、町の責任

サメを倒す結末は、大きな解放感を与えます。ただ、それまでの被害がすべて自然のせいになるわけではありません。危険を小さく見せた判断や、止められなかった時間も、物語の中に残っています。

冒険としての爽快さと、もっと早くできたことがあったのでは、という後味が同居する。その両方があるから、名場面を知っていても、浜辺の場面からまた引き込まれます。

よくある疑問

サメが出てくるまで退屈?

人を襲う場面だけを期待すると、町の会話は長く感じるかもしれません。ただ、その時間があるから、海を開ける判断や、浜辺で見張るブロディの表情にも緊張が生まれます。

子どもと一緒に観ても大丈夫?

襲撃、流血、遺体の描写があります。明るい冒険映画のつもりで選ぶより、観る人が暴力や恐怖描写をどこまで受け止められるかで判断したい作品です。

おわりに

サメが登場するたびに驚く映画であり、登場しない時間にも目を離せない映画です。ブロディの落ち着かない視線につられて、何もない海まで怖くなる。その手応えは、いま観ても十分にあります。

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参考資料・画像の出典

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