【なぜ名作?】『エイリアン』感想・考察|逃げ場のない船で、正しい判断が通らない怖さ

怖いことが起きたとき、決まりを守れば助かると思いたい。でも、その決まりを同じ場所にいる誰かが破ってしまったら。『エイリアン』には、怪物の姿を見る前から始まる不安があります。

舞台は宇宙なのに、乗組員たちは夢を語る冒険家というより、仕事帰りの人たちに見えます。給料の話もするし、面倒な用事には気が進まない。その生活感があるから、船が安全な職場でなくなる変化が、妙に身近に迫ってきます。

前半は結末に触れずに紹介します。「感想・結末の考察」からは、重要な展開のネタバレを含みます。

『エイリアン』のあらすじ

地球へ帰る途中の商業宇宙船ノストロモ号は、未知の信号を受信します。乗組員たちは進路を変え、信号の発信元を調べるため、惑星へ降り立ちます。

調査の途中で、一人の乗組員が未知の生物と接触します。異変を抱えたまま船へ戻った彼らを、閉ざされた空間での恐怖が待っています。

『エイリアン』の基本情報

原題 Alien
製作年・国 1979年・イギリス・アメリカ
ジャンル SF/ホラー
監督 リドリー・スコット
主な出演者 シガニー・ウィーバー、トム・スケリット、ジョン・ハート、イアン・ホルム

作品情報の参照:20th Century Studios:作品情報・あらすじ・配役。

『エイリアン』が不朽の名作といわれる理由3選

1.一度見たら忘れにくい、エイリアンの不気味な造形

エイリアン:エイリアンの造形
エイリアンの造形。機械とも生物ともつかない姿が強い印象を残す。
画像出典:20th Century Studios/公式ギャラリー

エイリアンは、大きな牙のある怪獣というだけではありません。細長い頭、骨と機械が混ざったような身体、濡れた表面。H・R・ギーガーのデザインには、生き物なのに正体がつかめない気持ち悪さがあります。

映画は、その全身を最初からじっくり見せません。暗がりや短いカットの中に一部だけが見えるため、どんな姿で、どれほど危険なのか、想像してしまいます。たくさん登場させなくても怖い。怪物の見せ方のお手本のような作品です。

管理人
形が分からない間は、画面の配管まで怪しく見えてきます。よく見たい気持ちもあるのに、そこにいると分かった瞬間は見たくない。デザインの格好よさと、生理的に近寄りたくない感じが同居しているのが強烈です。

2.宇宙船の中が、逃げられない怖さを作っている

エイリアン:異星の船を調べる乗組員たち
異星の船を調べる乗組員たち。通路や装置の美術にも注目したい。
画像出典:20th Century Studios/公式ギャラリー

舞台のノストロモ号は、明るく清潔な未来の乗り物というより、配管や機械が詰まった働く場所です。狭い通路、蒸気、物陰、機械の音。その作り込みが、怪物がいない場面にも緊張を残します。

外へ飛び出せば助かる場所でもありません。乗組員は、危険が潜む船の中を、自分たちで移動しなくてはならないんです。1979年の作品ですが、設定を知らなくても、暗い通路の先へ進みたくない気持ちは、すぐに分かります。

管理人
知らない物音がするだけでも嫌なのに、明かりが届かない場所へ確認しに行かないといけない。宇宙の壮大さより、その仕事の嫌さがリアルです。船の外も安全ではないので、「とりあえず逃げる」が使えないのがきついです。

3.リプリーの冷静な判断にも、ちゃんと怖さが見える

エイリアン:宇宙服姿のリプリーを演じるシガーニー・ウィーヴァー
宇宙服姿のリプリーを演じるシガーニー・ウィーヴァー。
画像出典:20th Century Studios/公式ギャラリー

リプリーは、怪物を倒すために登場する無敵の戦士ではありません。船の規則を守ろうとし、危険を持ち込まないよう主張する乗組員です。ところが、同僚の判断や会社の都合によって、その慎重さが通らないことがあります。

シガーニー・ウィーヴァーが見せる、状況を確かめてから動く姿が頼もしい。その一方で、息を整える様子や切迫した表情には、十分な恐怖が見えます。強いから平気なのではなく、怖い中でどうにか考えている人だから、最後まで気持ちがついていきます。

管理人
最初の慎重な意見を聞いていれば、と言いたくなりますよね。何か起きてから冷静でいろと言われても難しい。その中で一つずつ確認して動くリプリーは、派手な決め台詞がなくても頼れる主人公です。

感想・結末の考察【ここからネタバレ】

怪物のほかにも、信用できないものがある

会社側の目的が乗組員の安全と一致していないと分かると、恐怖の形が変わります。船の外から入ってきたものだけを警戒しても、自分たちを守るはずの仕組みまでは信用できません。

ここで、働く人たちの映画として始まったことが効いてきます。仕事として従った判断の先で、自分たちはどのくらい大事に扱われているのか。SFの仕掛けでありながら、かなり現実に近い不安が残ります。

緊張がほどける瞬間の使い方

終盤は、船を離れればすべてが終わるという安心も簡単にはくれません。空間が小さくなり、隠れる場所や手に取れるものまで気になってきます。リプリーが状況を確かめ、行動を選ぶ時間が、最後まで緊張をつなぎます。

大きな力で一気に押し切る主人公ではないから、判断の一つずつに観客も付き合うことになります。その積み重ねがあるので、生き残ったことを、結果だけでなく時間の長さとして感じられます。

作品についてよくある疑問

シリーズを知らなくても観られる?

1979年の第1作から観られます。この記事もリドリー・スコット監督版を扱い、続編『エイリアン2』の内容とは分けています。

どんな怖さの映画?

閉鎖空間の緊張に加えて、身体を侵される強い描写もあります。静かな心理ホラーだけを想像していると、驚く場面がある作品です。

あわせて観たい作品

宇宙船の外が怖いのは分かっていたのに、船の中まで信用できなくなる。そんな逃げ場のなさを、音や通路の長さから感じたい日に観たい作品です。

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