【なぜ名作?】『シザーハンズ』感想・考察|優しく迎えた町が、同じ笑顔で人を追い出す

見た目は怖いのに、中身は優しい。『シザーハンズ』は、そう紹介されることの多い映画です。でも観ていて気になるのは、エドワードの優しさ以上に、彼を迎える町の人たちの親しげな顔だったりします。

珍しい人が来たと喜び、才能を便利に使い、うまくいかなくなると距離を置く。その変わり方が、きれいなおとぎ話の町だからこそ、嫌にはっきり見える。触れたいのに触れられない恋の話と、他人を受け入れる難しさが重なった映画です。

※前半は結末に触れずに紹介し、後半の考察ではネタバレを含みます。

あらすじ

丘の上の屋敷で、一人暮らすエドワード。彼を作った発明家が亡くなったため、両手はハサミのまま残されていました。化粧品の訪問販売をするペグは、屋敷で彼を見つけ、自宅へ連れて帰ります。

郊外の町に迎えられたエドワードは、庭木や髪を切る才能で注目されます。ペグの娘キムにも思いを寄せますが、町の期待や人間関係は、彼の思うほど分かりやすいものではありませんでした。

基本情報

作品名 シザーハンズ
原題 Edward Scissorhands
製作年 1990年
製作国 アメリカ
監督 ティム・バートン
主な出演者 ジョニー・デップ、ウィノナ・ライダー、ダイアン・ウィースト
ジャンル ファンタジー/恋愛

『シザーハンズ』が不朽の名作といわれる理由3選

1. カラフルな町のほうが、だんだん不気味になる

シザーハンズ/Movieclips配信映像のサムネイル
画像引用:Movieclips「Edward Scissorhands (1990) – Edward Frightens Kim Scene (1/5) | Movieclips」(配信映像のサムネイル)

暗い屋敷と、淡い色でそろった住宅街。最初は、黒い服のエドワードだけが異物のように見えます。町の人々は明るく、家も庭も整っている。その見た目が、安心できる場所のような印象を作ります。

ところが、住民は珍しい訪問者に一斉に関心を向け、噂を交わし、自分の都合で近づきます。整った景色の中に、他人の話を大勢で決めてしまう空気があるんです。

ティム・バートンの美術は、単に可愛い町を作るためのものではありません。誰もが似た暮らしをしているように見えるから、外れた一人への視線が目立つ。エドワードの服装に驚いていたこちらも、いつの間にか町のほうを疑うようになります。

管理人
最初は、お城より町へ来られてよかったと思います。でも、みんなが知りたがり、同じ話を広げる様子を見ていると、あの明るさが少し怖くなる。笑顔で迎えることと、相手の居場所を守ることは、同じではないんですよね。

2. ハサミが、才能にも生活の不自由にもなる

シザーハンズ/Movieclips配信映像のサムネイル
画像引用:Movieclips「Edward Scissorhands (1990) – A Thrilling Experience Scene (2/5) | Movieclips」(配信映像のサムネイル)

エドワードの手は、庭木や髪を美しく変えます。町の人々は、その才能にすぐ反応します。役に立つ、面白い、見てみたい。彼の存在が歓迎される理由も、そこに集まっていきます。

でも、食事や着替え、人に触れるといった日常では、その同じ手が邪魔になる。人に喜ばれることができても、自分の毎日が楽になるわけではありません。

ジョニー・デップの小さな視線や、身体を固くする動きが、その不自由を伝えます。優しさを長い台詞で語るより、近づきたい相手を傷つけないように距離を取る。その動きが、彼の気持ちを具体的にしています。

管理人
才能があると分かった途端に、大事にされる人になる。でも、その人が普段どう困っているかは、あまり見てもらえない。エドワードの場面には、その寂しさもあります。上手に切れる手と、食事に困る手が同じなのが、ずっと引っかかります。

3. 雪の場面が、抱きしめられない距離まで美しくする

シザーハンズ/Movieclips配信映像のサムネイル
画像引用:Movieclips「Edward Scissorhands (1990) – Edward Makes Snow Scene (3/5) | Movieclips」(配信映像のサムネイル)

エドワードが氷を削り、その破片の中でキムが踊る。ダニー・エルフマンの音楽とともに、現実の住宅街が一瞬、別の場所のように見えます。有名な場面ですが、物語の途中で観ると、二人の距離がそのまま形になったようにも感じます。

触れられなくても、相手を喜ばせることはできる。一方で、その美しさだけでは解決しない身体の距離もある。ハサミという設定が、絵の面白さから、関係の難しさへつながっています。

幸福な映像なのに、いつまでも続かない予感がある。二人にとって自由な時間が、町のいつもの暮らしから少し外れたところにしか生まれないからかもしれません。きれいだと思うほど、場面が終わるのが寂しくなります。

管理人
抱きしめれば思いが伝わる、という当たり前が使えないんですよね。その代わりに、相手のいる景色そのものを変えてしまう。雪の場面は甘いだけではなく、できることとできないことが一緒に見えるので、あとまで残ります。

ここからネタバレあり|結末・テーマの考察

キムの選択は、すっきり正解と言えなくてもいい

終盤、ジムとの対立のあと、キムは町の人々にエドワードが死んだと伝えます。それによって彼は屋敷に残れる一方、人々の誤解が公に解けるわけではありません。

守るために距離を置く選択として理解できても、なぜ彼だけが社会から離れなければならないのか、という不満は残ります。その引っかかりを消さずに観たい。町の態度まで改まる結末ではないから、美しい雪にも寂しさが混じるんです。

雪が残っても、孤独まで消えたわけではない

年を重ねたキムの語りは、二人の短い時間をおとぎ話として残します。屋敷で氷を削るエドワードと、町へ降る雪。離れたままでも関わりが続いているように見える結末です。

それを純愛としてだけ受け取ると、エドワードが引き受けた孤立を見落とすかもしれません。思い出は美しい。でも一緒に暮らす方法は見つからなかった。その両方があるから、優しい物語として閉じ切らず、大人になっても違うところが気になる作品です。

よくある疑問

怖い映画?

おとぎ話の雰囲気ですが、暴力や死、住民が一人へ敵意を向ける描写があります。温かな恋愛だけを想像するより、切なさや社会の怖さもあるファンタジーとして観るのがおすすめです。

なぜエドワードの台詞は少ない?

彼の気持ちは、表情や手の扱い、相手との距離で伝わる場面が多くあります。周囲が彼のことをどんどん話すのに、本人の声は小さい。その差にも注目すると、町での立場がよく見えてきます。

おわりに

誰かの変わったところを、面白い才能として歓迎するのは簡単です。でも、思うように振る舞ってくれなくなったあとも、そこにいていいと言えるか。『シザーハンズ』の雪を思い出すと、その問いも一緒に残ります。

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参考資料・画像の出典

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